どんぐりの世界に答えを出すブログ

世の中の全ての問題に答えを出すブログ。学校では答えを教えてくれない日常や実際、人生上の問題に「答え」を出していきます。あなたが疑問に思う問題も募集中。

「アリとキリギリス」のアリの判断は正しかったのか?

問題編

 

問題:「アリとキリギリス」のアリの判断は正しかったのか?

 童話「アリとキリギリス」の結末はいろいろありますが、今回は①キリギリスは食糧を与えてもらって改心する、②キリギリスはアリに食糧を分けてもらえず死んでしまう、という二つの結末について考えましょう。

 それぞれの結末について、アリの判断は正しかったのか、それが今回の問題です。

 参考までに「アリとキリギリス」のあらすじを書いておきましょう。

 キリギリスは夏の間遊んで暮らしていて、冬に備えて食糧を集めてばかりいるアリのことを笑います。しかし、冬になり食糧がなくなるとキリギリスはアリの家に行って食糧を分けてくれと言います。ですがアリは「君は働いている僕たちのことを笑ったよね」と言います。

①しかし、アリはキリギリスをアリの晩餐会に招き入れ、「次から気を付けてくださいね」と忠告しました。キリギリスは改心し、次の夏から働くようになりました。
②結局、アリはキリギリスを突き放し、キリギリスは餓死してしまうのでした。



解答編

 

解答:「アリとキリギリス」のアリの判断は正しかったのか?

 では、正解を発表しましょう。正解は。。。

 アリの判断は①にせよ②にせよ(アリが望む未来になれば)何でも正しかった

 です。

 「はあ?それはないよ!」と画面の向こうからまたも声が聞こえてきましたが、あなたはテレパシー研究所の博士に一度見てもらった方がいいと思います。

 例えば、キリギリスに死んでほしくなければ①食糧をあげればいいし、アリの食糧が底をつくリスクを負いたくなければ(もしくは自分たちをからかったキリギリスが気にくわなければ)②キリギリスを追い返せばいいのです。

 アリが望みたい未来を望み、その未来になればどんな判断でも正しかったのです。逆に、どんな選択をしようと、アリが望まぬ結果になったら意味がない(=正しい判断ではない)のです。これは「議決で9割の承認が必要だと決めるのに必要な承認は過半数でいいのか?」という問題に似てますね。

sekakota.hatenablog.com

 ですが、この答えではなんかしっくりこないなぁという人もいると思います。そういう人のためにもう少しだけ詳しい解説を行いましょう。

詳しい解説

 実は、アリの判断は2段階に分けることができます。一つは、Ⅰ.どの未来を望むかという判断、もう一つはⅡ.望む未来になるようにどの選択肢(今)を選ぶかという判断です。

Ⅱ.望む未来になるようにどの選択肢(今)を選ぶか

 Ⅰ.の方が難しいので置いておいて、一旦Ⅱ.について説明しましょう。(Ⅱ.の説明は要らないという方は次のセクションに飛んでください)

 結論から言うと、選択肢(今)を選ぶと(確率的に)未来が決まるので、(その確率を考慮して)どの未来にしたいかで今を選べばよいということです。

 未来にはいろいろな要素がありますが例えば次の3点(A,B,C)に絞って考えると、①食糧をあげた時と②追い返した時で次のような未来が考えられます。(「確率的に」の説明は省きます)

アリの判断(今)と結果(未来)
  ①キリギリスに食糧をあげた時 ②キリギリスを追い返した時
A.キリギリスの生死 生きる 死ぬ
B.アリの食糧 途中で足りなくなるかもしれない(→アリもキリギリスも死亡) 食糧は足りる
C.アリの思い 自分たちを馬鹿にしたキリギリスを助けるのは人(アリ)によっては不愉快だろう。 自分たちを馬鹿にしたキリギリスに仕返しができて人(アリ)によっては喜ぶだろう。

 ここで、②Bについては食糧がなくなればアリもキリギリスも共倒れで死ぬことになりAと被っていますが今回はそこは考えないことにします。

 ここでアリは、AとBとCの3点が望む未来になるように、今(①、②、もしくはここにない選択肢でもいい)を選べばいい話なのです。

 しかし、もしAとBとCの全てがアリの望みに叶う選択肢が①と②(と他の選択肢)の中に無ければ、A,B,Cのどれを優先するか、という望む未来の優先順位を考えなければならないでしょう。

 そう考えた時、Ⅰ.どの未来を望むかということを改めて考える必要が出てきます。そして、それについて説明したのが次のセクションです。

Ⅰ.どの未来を望むか(論理的な解答)

 さて、僕が思うに恐らくこの問題の答えを納得しづらくするのは、Ⅰ.どの未来を望んだら正解なのかということが分かりづらいところにあります。でも本当は、どの未来を選んでも選びたいように選べばそれが正解になります。

 そして「どの未来を選べばよいか」という質問の答えはそれが正解です。ではこのセクションでは何を説明するかというと、なぜこれが正解と分かりづらいかという僕の考えを書こうと思います。なのでその意味では、これと次のセクションだけどんぐりの仮説カテゴリー寄りになっています。

 さて、どの未来を選んでも選びたいように選べばそれが正解なのですが、人間として、道徳的な観点も含めて判断もしたいと思うでしょう。そして僕の考えでは、道徳をどの程度守ればいいかが分からないために「どの未来を選べばいいか」もわからなくなっているのではないかと思うのです。

 では、これを「目的を考える」を使って解いてみたいと思います。

sekakota.hatenablog.com

 道徳を守る目的を考えてみましょう。辞書を見ると道徳とは社会生活を営む上で、ひとりひとりが守るべき行為の規準(の総体)Oxford Languagesより)とあります。ここから推測して(推測できないかもしれませんが)今回は道徳を「自分がされて嫌なことを相手にしないこと」とまとめましょう。すると、ここでは(※)道徳を守る目的は(皆がそれを守ることで自分も)「相手に嫌なことをされないため」と考えることができます。

(※ちなみに、別に道徳を守れば「相手に嫌なことをされない」わけではありませんが、また、目的は「相手を傷つけないため」など他にもありますがそれらは今回は置いておきます)

 つまり、道徳をどの程度守ればいいかは、「誰かに嫌なことをされる(リスクをとれる)」かどうかで測ればいいことが分かると思います。

 で、「目的を考える」的にはこの後の行動のとり方は目的を叶えられれば何でもいいです。しかし、ここで極論(※)を言語化するのは人間として避けておきたいので(察してください)、この解答のこれ以降の説明は割愛することにします。(!)

(※実際は極論でない(論理的な)解答を作れますが、それを論理的に記述するのは難しいのでやめておきます)

Ⅰ.どの未来を望むか(道徳そのものを守る方向での解答)

 代わりに、「目的を考える」途中で道徳は「自分がされて嫌なことを相手にしないこと」だと気づけたので、そこを利用して道徳を守る方向の別の解答を作りたいと思います。

 道徳を「自分がされて嫌なことを相手にしないこと」とまとめた時、今回における道徳を言語化すると、

 (自分が誰かを馬鹿にするようなことがあったとして、自分がその人に助けを求めなければならない状況で、かつ、)その人が自分を助けることでその人の命が危うくなっても、自分がその人から助けをもらえて当然と思うか否か(助けをもらえないことを嫌なことだと考えるかどうか)…(*)

 となると思います。そして僕は、(道徳の目的ではなく)道徳(自体)は<皆>がそれを道徳的と思うかで決まるものだと思っています。ですが*)を当然と思うか否かは、<皆>が「道徳的/もはや道徳を超えたもの」と判断するちょうど境目にあると思います。なので、道徳を守ろうとしても、どこまでが道徳なのかはっきりしていないので守ることができません。

sekakota.hatenablog.com

 じゃあ、どうしたらいいかというと、絶対に道徳を守りたい、と思えば無難に命を懸けてもキリギリスを助ける未来を選べばよく、いや、道徳なんて気にしない、と思えばそのほかの要素で未来を選べばいいでしょう。(その際は「誰かに嫌なことをされる」リスクをとる覚悟が要ります。ですがその覚悟があろうとできるだけ道徳は守りましょう)

余談:この問題の本質

 この問題の本質は『正しい』という言葉にあります。『正しい』とは人間が作った抽象的な概念です。それで、『正しかったのか』と聞かれても、それはどの点から見て正しいかによって<正しい>かどうかが変わるので、質問自体がそもそも完成されていなかったのです。

 また、どんな点から見ても<正しい>答えなどありえません。

まとめ

  • アリの判断はアリが望む未来になれば何でも正しい
  • この問題の答えが分かりにくい理由は道徳をどの程度守ればいいかが分からないところにあると思う。

 

今回使った解法

sekakota.hatenablog.com

sekakota.hatenablog.com

 「Ⅰ.どの未来を望むか」のセクションでは次も含みます。

sekakota.hatenablog.com

 

関連記事

sekakota.hatenablog.com