議決で9割の承認が必要だと決めるのに必要な承認は過半数でいいのか?
問題編
問題:議決で9割の承認が必要だと決めるのに必要な承認は過半数でいいのか?
僕は現在大学の寮に住んでいます。僕の寮は、寮生皆が何らかの役職をもって運営をし、寮のルールも自分たちで決める、という自治寮です。ただ、寮生が一人でも長期的に欠けると寮の運営に支障をきたすので、今までは寮生の留学は認めない、というルールでした。
ある時、この寮での留学を認めようという動きがありました。ただ、留学を認めて一人が寮から長期的に欠けるのは寮にとっては相当な負担なので、寮生50人中9割の承認があれば留学してもよいことにするというルールにすることになりました。
ルールを作成や廃止には寮生の過半数の承認が必要ですので、このルールを制定するためには寮生の過半数が賛成することが必要でした。
ここで、論争が発生しました。寮生の9割の承認が必要だというルールを作るのに必要な寮生の承認の数は、過半数でいいのか、と。これが今回の問題です。
ちょっと考察
このルールによって留学したい寮生の留学の是非を決めるのにかかわるのは寮生の9割です。だったら、寮生の9割が決定にかかわるということを、寮生の5割(過半数)で決めてしまってもいいのでしょうか。寮生の9割で決める、とするべきではないですか?
また、ルールが9割の承認が必要と決めても、そのルール自体の変更は5割の承認でできるのですから、9割という数字にはあまり意味がなくなります。これもやはり、このルールの作成・変更自体も9割の承認がないとできない、とするのが自然ということではないでしょうか。
解答編
解答:議決で9割の承認が必要だと決めるのに必要な承認は過半数でいいのか?
では、さっそく正解を言いましょう。正解は…
何でもいい
です。
「はあ?何それヒキョーじゃん!」と、画面の向こうから声が聞こえてきましたが、こんなに何度も人の脳にテレパシーを送れるなんて、すごいですね!
なぜ、「何でもいい」のか。それは結論から言うと、ルールの内容とその決め方はそれぞれ別の問題だからです。
解説
かみ砕いて説明しましょう。
まず、そもそもこのルール自体は何故9割の承認が必要なのでしょう?一番大きい理由は、留学生が出ることは寮にとって相当な負担なので、選考を厳しくすれば(その負担により見合う人材に)留学者を減らせるからです。
対して、ルール案の可否決を決めるのに必要な承認の数(例えば過半数)は、どのように決められるべきでしょう?それは、その可決または否決が良い判断だ、と言えるようになるように決めるべきなのです。
(本当はここは一番寮生の意見を反映できているかどうかなどいろいろ解釈はできて、話はもっと複雑にすることもできるのですが)
今のところ、新しいルール案が作られると、過半数の承認があれば可決され、それ以下であれば否決されるようになっています。それは、ルール案を可決することが正しい判断であるか否かは、過半数の承認があるかどうかで判断しよう、と決められたからそうなったのです。逆に、何割の承認でそのルール案が可決されようと、後で「いやこのルールは可決しない方がよかったな」ってなったら意味がないのです。
でまあ「何でもいい」といいましたが、本当は「ルール案の可決は過半数の承認をもって行う」というルールを守るなら、過半数の承認で決めた方がよいでしょう。しかし、議決の目的が「(ある意味)正しい決議をする」ことにあることを考えると、やはり過半数に限る必要はないのです。
このルールの制定が何割の承認で可決されるにせよ、留学者が増えすぎて寮に負担を与えてしまったら意味がありません。そして、逆に留学したい人がいるのに、あまりに承認が下りなさ過ぎて留学者が出てこなくなっても意味がありません。
であれば、「何割の承認があればもっともそうなる確率が低いだろう」というような割合を考えて、それで決めるのが最も良いのです。
しかし現実には、そのような割合は分かりませんから(というかそもそもそんな確率など存在しないのですが…)、今までの慣習通り過半数で決めてもよし、しかしそれでは感覚的にあまりに少ないな、という話になれば2/3でも9割でもよし、というわけです。
(むしろ、本当は議決という形に定まらないほうが目的を達成するためには的確ではあります。)
要は、「このルールの制定で留学者が増えすぎて寮に負担を与えてすぎなくて、また逆にあまりに承認が下りなさ過ぎて留学者が出てこなくならなければ、何でもいい」のです。
まとめ
- このルールの制定で留学者が増えすぎて寮に負担を与えてすぎなくて、また逆にあまりに承認が下りなさ過ぎて留学者が出てこなくならなければ、何でもいい。
今回使った解法