どんぐりの世界に答えを出すブログ

世の中の全ての問題に答えを出すブログ。学校では答えを教えてくれない日常や実際、人生上の問題に「答え」を出していきます。あなたが疑問に思う問題も募集中。

「言語ゲーム」をめっちゃ分かりやすく解説してみる

言語ゲーム」とは

 前回と今回で解説する概念は、解法論の中核を担うと思われる理論です。今回の概念は言語ゲームです。言語ゲームは、哲学を2回終わらせた男といわれた哲学者ウィトゲンシュタインが提唱した、言語活動の本質を言い当てた概念です。

 では、言語ゲームについて解説していきましょう。結論から言うと言語ゲームとは、言語活動は、<皆>が発信した言語の意味を当て、<皆>に伝わるように言語を発信していくゲームだととらえる概念です。

 普通、言葉の意味は最初から決まっていると考えます。例えば、僕たちは下の写真を見たら、「犬がパソコンをのぞき込んでいる」と説明します。

f:id:donguri0912:20200918105814j:plain

makotomoさんによる写真ACからの写真

 このとき使った「犬」という言葉の意味は、

食肉目イヌ科の哺乳類。嗅覚・聴覚が鋭く、古くから猟犬・番犬・牧畜犬などとして家畜化。多くの品種がつくられ、大きさや体形、毛色などはさまざま。警察犬・軍用犬・盲導犬・競走犬・愛玩犬など用途は広い。

引用元:犬(いぬ)の意味 - goo国語辞書

 と最初から決まっている、と普通は考えます。

 しかし、ウィトゲンシュタインが解明したのは、それは間違いであり、実は「犬」という言葉の意味は使って初めて決まるということでした。

 例えば、ドSの人と、その友達2、3人が会話をしているとします。もし、ドSの人が「うちの犬がパソコンをのぞき込んでいる」と言ったら、恐らくこの「犬」はドMの彼女(彼氏)を指すでしょう。
 指すんです。

www.inuboku.tv ↑分かる人にはわかるいぬ

 言語の意味はあらかじめ決まっているのではなく、(使う状況を含めた)使い方によって決まるのです。

 実は先ほどのgoo国語辞書の引用には続きがあり、上の定義のほかに

  1. 他人の秘密などをかぎ回って報告する者。スパイ。「官憲の―」

    人をののしっていう語。

    「請ふらくは君わが家の―に語れ」〈今昔・九・三〇〉

    引用元:犬(いぬ)の意味 - goo国語辞書

 の意味がありますが、「言語の意味は(使う状況を含めた)使い方によって決まる」というのは、この3つの中から意味を選ぶという意味ではありません。この3つの中の意味でなくても、伝われば、「犬」という言葉を使うことができます。

 その意味で、<皆>に伝わるように言語を発信していくというゲームなのです。また、<皆>はこの時「犬」が<うちの彼女>という意味の言葉であることを認識し(当て)ます。その意味でも、<皆>が発信した言語の意味を当てるというゲームなのです。
 ここでいう<皆>とは、その会話をするコミュニティ(のある程度の人達)を指し、今回の例でいえばドSの人とその友達2、3人です。

 言語の意味が使い方の中で決まるということは、例え<皆>が<猫>を「犬」と呼び/認識し始めれば、そのうち「犬」が<猫>を表す言葉になるということです。
 たとえ<皆>が日本全体だったとしても、「犬」は<猫>を表す言葉になります。それはつまり、言語の意味は決まっているわけではなく、常に今も変化しうるということを意味するのです。

補足:空気を読む、確かにそうとも言えるが、もっと普遍的

 分かりやすくするために極端な例を使って説明したので空気を読む話かと思われたかもしれません。でも、先ほどの例の中の彼らは、空気を読もうとしているのではなく、自然に言葉の意味を認識する(当てる)ということをやっているのです。
(少なくとも僕はそういうつもりで描写しました。)

 例えば、A「①彼女は彼氏に冷たくされて幸せです」という文は普通理解できません。
 B「①彼女は彼氏とラブラブで幸せです」なら、分かりますよね。
 Aを分かりやすくするには、A「②なぜなら彼女はドMだからです」と②の文を付け加える必要があります。

 しかしそうなると、B「②なぜなら彼女はドMではないからです」とBにも②を付け加える必要はないのでしょうか。
 いえ、その必要はないのです。なぜなら、普通「彼女」は<ドMではない>からです。

 言語ゲーム的に、「『彼女』は<ドMではない彼女>の意味で使われている」と解釈できますが、これを空気を読んでいると考えるかは人次第です。
 しかし、僕たちは、普通B「①彼女は彼氏とラブラブで幸せです」を理解するとき、「『彼女』は<ドMではない彼女>の意味で使われている」の「ド」の字も思い浮かぶことなく理解していますから、普通これを空気を読んでいるとはいわないでしょう。

補足:実は単語単位ではなく文法も、文脈も、言語ゲーム

 今まで「犬」「彼女」という単語単位で説明してきたので言語ゲームは単語の意味でゲームをしているみたいに思えたかもしれません。ちょっと分かりやすさを優先した解説をしたのでここで正確性を補填します。

 ゲームをしているのは単語だけでなく、文法も、文脈も含め、言語活動の及ぶすべてのものでゲームをしています。

 文法で例を挙げれば、「今私がいるのは、アメリニューヨーク、自由の女神像前です!」の「」の使い方とか、「マジ卍」とかでしょうかね。

まとめ

  • 言語ゲームは、言語活動は、<皆>が発信した言語の意味を当て、<皆>に伝わるように言語を発信していくゲームだととらえる概念。
  • 言語活動を言語ゲームととらえると、言葉の意味は決まっているわけではなく、ゲームの中で常に今も変化していると考えられる。