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身長が1mm伸びる方法を繰り返せば身長は2mになるのか?

問題編

 

問題:身長が1mm伸びる方法を繰り返せば身長は2mになるのか?

 この前、僕の高校の友達がこんなことを言っていました。

友達1:「Youtubeで『身長が1mm伸びる方法』って動画見たことあるけど、あれって毎日繰り返せばそのうち身長2mとかになるんじゃね?」
友達2:「出たよ、頭の悪い(数学的)帰納法w」
友達3:「多分それ、1回やったら2回目以降は効果ないんじゃない?」
友達1:「え、でもさ~、実際1mmぐらいやったら毎日伸びそうじゃね?」
友達3:「うーん、確かに。友達2はどう思う?」
友達2:「多分それって伸びた後また縮むから、結局そんなには伸びないんじゃない?」

 ちょっと僕の描写の仕方がひどくて友達1が頭悪い人みたいになってしまいそうなので彼の名誉のために補足しておくと、彼は阪大に通う普通に頭いい人です。
(そのほかの二人は東工大と京大医学部です)

 さて、当たり前ですが、身長が1mm伸びる方法を繰り返しても、身長は2mになりません。それを認めたうえで、今回の問題はそうなる過程・理由を言語化することです。つまり「身長が1mm伸びる方法を繰り返しても、身長は2mにならない」ことをどう考えればよいか?というのが、今回の問題です。

 僕の友達はいろんな意見を出してくれましたが、その中に納得できるものはあったでしょうか。おそらくですが、「なんかしっくりこないなあ」って感じじゃないかなと思います。

 そうですね。もう少し秀逸な答えがあります。なぜ、彼らの答えではしっくりこないのか、その理由を考えればその答えにたどり着けるのではないでしょうか。

 今回の問題はいつもの論理的なやつとは違ってお遊びみたいな感じです。答えも複数ありますが、ここでは一つの考え方を紹介します。

ヒント:なぜ彼らの答えではしっくりこないのか

 なぜ彼らの答えではしっくりこないのかを考えてみましょう。それは一言でいえば「彼らの立てた仮定が一般的な考えの範囲から飛躍しすぎているから」です。ちょっと難しく言いすぎましたが、簡単にだけ説明します。簡単にしかしないので分からなかったら飛ばしていいです。不親切なヒントですね。

 多くの人は「身長が1mm伸びる方法」と聞いたら、身長が「半永続的に/もしくは永久的に」1mm伸びると考えます。ですから、友達2の「伸びた後また縮む」が仮に本当だったとしても、「縮む前にもう一回伸ばせばいいじゃん」という風に考える余地を与えます。

 また、友達1も言っているように、「1mmぐらいだったら実際毎日でも身長は伸びそう」と考える人が多いです。正確には、「たとえ2回目以降とはいえ、身長が1mm伸びる方法をして伸びる身長は1mmじゃなかったとしても、0というのはあり得ないはずだ」ってところでしょうか。

 故に、友達2と友達3はその多くの人が考えることに反する仮定を導入しているから、しっくりこないのです。逆に、それらに反しない答えを考えれば、おのずとしっくりくる答えにたどり着きます。

 そして、恐らく考えればいいのは今あげた2点だけだと思います。つまり、

①身長を1mm伸びる方法は「半永久的/もしくは永久的に」伸びるものであること。
②2回目以降、身長が1mm伸びる方法をして、必ず身長が伸びること(伸びる身長は0ではないこと)。

 という2点に反しない仮定なら答えの中に導入できるわけです。



解答編

 

解答:身長が1mm伸びる方法を繰り返せば身長は2mになるのか?

 この問題の答えはいろいろあり得ますから、今回はその中の一つを紹介します。この答えは、

①身長を1mm伸びる方法は「半永久的/もしくは永久的に」伸びるものであること。
②2回目以降、身長が1mm伸びる方法をして、必ず身長が伸びること(伸びる身長は0ではないこと)。

 を満たしています。では発表しましょう。例えばその答えは…

 2回目以降は前回値の1/10伸びる

 です。

 こう考えると、1回目は1mm伸びる、2回目は0.1mm伸びる、3回目は0.01mm伸びる、4回目は0.001mm伸びる、…という風になります。この時、数学の極限の考え方を使えば、最終的に合計で1.111111111...mm=10/9mm伸びます。つまり、身長が無限に伸びて、2mになることはありません。このように数学の収束という概念に着目すれば、を満たす解答を導けるのです。

(ちなみに、1.11111..mmという値が想像しにくければ、身長が0.9mm伸びる方法で考えてみるといいかもしれません。この場合、0.9,0.09,0.009,...と伸びて、最終的に0.99999...mm=1mm伸びます(数学的に0.99999...と1は表記方法が違うだけで同じ数字として扱われます))

 もちろん、実際にはきっちり前回値の1/10になるとは思えませんし、毎回の割合も1/2とか1/5とか変わると思います。でも、身長が1mm伸びる方法で伸びる身長は2回目以降も0ではないと仮定し、身長が1mm伸びる方法を時間をおかずに何度もした場合は、きっと、この数学の収束のような現象によって値が落ち着くのではないかなと思います。

 ちなみに、①と②を満たすものであれば、他にも解答はあっていいと思います。

数学的機能法について

 友達2が「出たよ、頭の悪い(数学的)帰納法w」といっていたので、それについて補足しようと思います。友達2の数学的帰納法に当てはめられないという考え方は実によかったのですが、そのあとの仮定の立て方がちょっと残念でした。

 数学的帰納法というのは、「i)  \(n=1\)のときに\(4^n-1\)は3の倍数である。ii)  \(n=k\)の時、\(4^n-1\)が3の倍数であるならば、\(n=k+1\)の時、\(4^n-1=4\left(4^k -1\right)+3\)より3の倍数である。iii)  i),ii)より、全てのnにおいて\(4^n-1\)は3の倍数である」みたいなやつです。

 今回の問題を数学的帰納法的に書いてみましょう。
「i)  回数\(n=1\)のとき、身長は\(1\)mm伸びる。ii)  回数\(n=k\)の時、身長が\(?\)mm伸びているならば、回数\(n=k+1\)の時、\(?\)mm伸びる」
 このようになり、ii)が書けないのでiii)も書けません。

 なぜii)が書けないのか。それは、回数\(n=k+1\)に身長がすでに\(?\)mm伸びた状態から何mm伸びるかが分からないからです。「身長が1mm伸びる方法」が、「すでに回数\(n\)mm伸びた状態からでも身長が1mm伸びる方法」でないから、ii)が書けないのです。

 言い換えれば、「身長が1mm伸びる方法」というのは、「何もしていない状態なら1mm伸びる方法」であるから、数学的帰納法に当てはめられないのです。

まとめ

  • 「身長が1mm伸びる方法を繰り返しても身長は2mにならない」ことの考え方の一つは、例えば、「2回目以降は前回値の1/10伸びるから」。

 

今回使った解法

 今回はひらめき色が強いのでほとんど使っていませんが、一応解法論の本質の記事を載せておきます。

sekakota.hatenablog.com